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おつきさまの記。

不登校の話とか、教育の話とか。その他諸々、日々の徒然。

母について思うこと。

私の母は、かわいそうなひとです。

 

母は、厳しい祖母と優しい祖父のもとで育ちました。祖母は「手に職をつけなさい」と母を家政系の短大に行かせ、卒業後は祖父の口利きで大手企業の一般職に就職。同期の若い女の子達と合コンやイベントやサークルに勤しみ、そこである男性に出会いました。一流大卒で、背は高く、鼻も高く、スマート。一部上場企業に入社して、将来有望。しかも年下。今まで女性経験がなかった彼は、恐らく母にころっとやられ、そして結婚しました。それが父です。

父と母には、子供が三人生まれました。家を建て、安定した生活が始まります。母も好きな事を仕事にし、充実した日々を送っていました。

 

暗雲が垂れ込め始めたのは、祖父が認知症になったころです。(祖母は早くに亡くなっていました。)認知症の祖父を介護するために同居し、ヘルパーの資格も取りましたがやはり限界があり、グループホームで生活してもらうことに。そして母は、仕事を探してフルタイムで働き始めます。

それと同時期に、父が家を出て行きました。愛人と暮らすためです。

 

 家庭も、子供も、そして何より親の介護でつらい思いをしている自分を見捨てて、父が愛人を選んだ。母のプライドは傷つきました。しかも父が選んだ相手は、年こそ母より若いものの、顔はいまいちだし、太っているし、派遣なのです。何がいいのかわかりません。だからこそ、深く深く傷つけられました。

 

一度は「親権なんていらない」とお互いに押し付けあいましたが、母はやはり子供を育てたいと決めました。子を育てるのには、お金がかかります。そこで母は「子供のために」離婚しないことを決めました。

父には婚費を請求し、養育費をいくらにするかも調停で争い。その後も調停から家庭裁判まで争い続け、婚費を貰い続けました。

その間も、子供達は母の苦労も知らずに不登校になったり学校でいじめられたりネットで知らない異性とやり取りをしたり、その対応に追われます。ようやく解決して大学に行かせた娘が、今度は母の苦労も知らずに恋人をつくり、浮かれたそぶりを見せたりする。配慮がないのです。「彼の家に泊まりに行きたい」というので、今まで設けていなかった門限を設けました。何かあったとき、傷つくのは娘だからです。クリスマスも出かけていたので、「家族と過ごすものだろう」と叱ってやりました。実家で暮らしている以上は、家主である母の言うことに従うのが当然です。「それなら一人暮らしをする」と娘が言いましたが、「彼と暮らすなら縁を切る」と行って阻止しました。娘は最終的には、母を悲しませるようなことはしないのです。

 

ある日娘が「彼が、お母さんと私の関係は変だっていう」と相談してきました。「私もそんな気がするけど、どうなんだろう」と。娘にそんな悩みを持たせるその男に腹が立ちました。「別れればいいじゃない」と何度も言っていたら、ぎくしゃくしだしたらしく、娘は別れました。彼は未練がましくしていましたが、母が出て行って、別れさせました。娘には会わせませんでした。

 

かて、父との離婚争いが十年ほども続いたころ、娘が「もう別れてもいいんじゃない」と言いました。確かにその頃母には恋人がいましたが、その人と結婚は考えていませんし、何より離婚しないのは子供のためなのです。裏切られた気持ちになりました。「あなたのためにこんなに苦労しているのに、そんなこと言わないでよ」と泣いてしまいました。

 

やがて子供達がみな高校を卒業し、ようやく離婚を成立させました。大手を振って恋人と遊べるようになり、母はしょっちゅう旅行にいき、イベントごとは彼と過ごすようになりました。クリスマスも、お正月もです。

 

最近、娘が「結婚したい」と言い始めました。相手は、なんと自分を「変な親だ」と侮辱した彼だそうです。信じられない。裏切られたような気持ちになって、聞いた瞬間に泣いてしまいました。「私を変な親だって言った男と結婚するの」と聞いたのに、娘は「変な親だよ」と逆に言ってきます。「それなら彼に謝ってほしい、私に失礼なことを言ったんだから、親として言うべきことがある」と言うと、「彼も謝るために、会いたいって言ってるよ」と。「二度と会いたくない、顔も見たくない、それでも彼を選ぶなら好きにして」と言ったら「好きにしていいなら好きにするけど」との答え。なぜこんなに娘のためを思ってやってきたのに、裏切るようなことばかり言うのかわかりません。

 

自分は悪くないのに旦那には捨てられ、女手一つで育てた子供も自分への理解が足りない。だから、母はかわいそうなひとなのです。同情の余地があります。

誰に話しても「女手一つでそこまで育ててくれて、おかあさんに感謝しなさい」と言われます。たしかにそうかもしれません。

感謝はしていますが、だけど私は、自分は母の「かわいそうさ」のあおりを一番受けていると思います。母は自分がかわいそうだから、誰かに認めて欲しくて、報われたいのです。認めるのも、報いるのも、私の役目なのです。でも、そんなことを言ったとしても、「私にどうしろって言うの」と泣き出すので、何も言えません。 ただ、「おかあさんは自分のできることを精いっぱいやってると思うよ」とぬるま湯のような言葉をかけるだけです。

 

母には反抗できません。私は母と自分との関係を考えれば考えるほど、母の「かわいそうさ」と、そのフォローを強いられてきた自分自身を見比べ、釈然としない気持ちになるのです。